時間とともに銀箔が錆び、写真の感光剤が色褪せ、画面上のイメージが少しずつ変化していく。それは時間 の経過を可視化する装置でもある。 《RACVYOXO》は、長崎県南島原市でのリサーチをもとに制作した作品である。この地ではおよそ430年 前、宣教師によって日本で初の西洋式活版印刷機が持ち込まれ、書物が刊行されたという。外国人宣教師が 日本語を学ぶために、また日本人がポルトガル語に触れるために、さまざまな辞書が編まれた。『落葉集』 と『日葡辞書』はその系譜を汲む書物である。 辞書は異なる言語をつなぐ道具とも考えられるだろう。ことばを文字として残すことで、私たちは過去のひ とびとの思考を辿り、自らの痕跡を未来へ伝えることができる。本作ではこれらの辞書から抜き出した文字 に、現地で撮影した風景を重ねることで、書物に残る過去の記録と自身が滞在した現在の記憶を一つの画面 に照らし合わせることを試みた。 本展では、《RACVYOXO》より波を主題とした作品を中心に構成する。南島原に滞在中、幾度となく海辺 を歩き波を眺めた。書物と異なり、波打ち際に書いた文字はたやすく消え去る。しかし砂粒を乱すわずかな 跡が、「かつてそこにあった時間」を確かに示している。作品もまた、ともすれば消え去るかもしれないイ メージに変化の痕跡を刻みながら、未来に手渡されていく。
須貝 旭 SUGAI Asahi
1990 兵庫県生まれ
2020 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 油画・版画領域 博士後期課程 修了
2017 タフツ大学美術館芸術学部 滞在留学
2016 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 油画・版画領域 博士前期課程 修了
2014 愛知県立芸術大学 美術学部 油画専攻 卒業
個展
2025 落葉抄, 愛知県立芸術大学サテライトギャラリーSA・KURA, 愛知
2024 類推の湖, RED AND BLUE GALLERY, 東京
2022 彗星考, L gallery, 愛知
2019 これから来る過去、通り過ぎた未来、おぼろげな今, Gallery Valeur, 愛知
主なグループ展
2025 星月夜, L gallery, 愛知
2023 Interface, HRDファインアート, 京都
2022 HOLBEIN ART FAIR, +ART Gallery, 東京
2021 Lights Gallery × REAL Style Exhibition, Lights Gallery, 愛知
2020 Framework, HRDファインアート, 京都
2017 美大生展, SEZON ART GALLERY, 東京
Kissing the Wall, タフツ大学美術館芸術学部, ボストン
Arts in Bunkacho トキメキが、爆発だ, 文化庁旧文部省庁舎, 東京
2016 物質としての絵画, 瞻百堂画廊, 東京
視界に満ちる海, 同時代ギャラリー, 京都
滞在制作
2025 南島原アートビレッジ・シラキノ, 長崎
受賞歴
2025 年度下期芸術文化助成, 野村財団
2023 キャリアアップ支援助成, クリエイティブ・リンク・ナゴヤ
2022 GOTO アート助成, 一般財団法人後藤欣之輔・美智子 世の中に貢献する人を育てる協会
2017 第34 回研究助成, 公益財団法人日東学術振興財団
2016 D アート賞, 公益財団法人堀科学芸術振興財団
2015 第30 回ホルベインスカラシップ, ホルベイン画材株式会社
成績優秀者・海外渡航費助成, 愛知県立芸術大学
学位論文
2020 銀箔の特性を応用した絵画 −「時間を可視化する」ための方法論−
博士( 美術), 愛知県立芸術大学
