この度、RED AND BLUE GALLERYでは「33年前のDRUM PAINTING 島州一展」を11月7日よ開催致します。この”DRUM PAINTING”と名付けられた未発表の油彩のシリーズは、1980年代に島州一が三次元から二次元に次元変換する表現形式を模索していた頃の作品で、作家にとって実験的な記念すべき平面作品となります。是非ともご高覧の程、宜しくお願い致します。
DRUM PAINTING By SHIMA Kuniichi
1980年、文化庁芸術家在外研修員としてパリとニューヨークを中心に研修を積んだ一年だった。従来の 表現行為を如何にして2次元作品に転換できるかという問題を追及した毎日であった。
油性の粘土を指で板に塗り付け、その上に和紙を被せてコンテでフロータージュし、余白は指でちぎって 除去することで自分の行為が平面のオブジェとなることを発見し、それを多量に使って壁や床にインスタレー ションした。しかし、それでは本当の意味での平面作品になったとは承知せず、その翌年改めてフィラデルフ ィアやニューヨークにて制作を始めたのが “DRUM PAINTING”だった。
その技法は、丸い円筒に紙やカンヴァス、フィルムを巻き付けてその上に絵具が付いた筆で袈裟懸けに斬り つけるように叩き付けて描いた後に、巻き付けてあった平面の素材を円柱から取り外して、平らに拡げたとき に出来た痕跡がドラムペインティング “DRUM PAINTING”と名付けた作品となって生まれた。
そのコンセプトは、単に平らな面に描きつけるよりも円という立体に描き付けるとタッチのスピードが倍加 され、よりスピーディでダイナミックなタッチになると考えたからである。
以上の技法は1970年代の写真製版を使った立体作品や表現行為(イヴェント)から如何に平面絵画にその 体験を生かして行くかという自分にとって革命的な第一歩が、正に “DRUM PAINTING”なのである。
ヴァーチャルな現代に対して、この単純明快で即物的な33年前の “DRUM PAINTING”を世に問うてみたい。
島州一(しま くにいち)
1935年 東京都麹町生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。
1969年 カルピスの商標である黒人の扮装で画廊に座り、自分自身を作品とする。
70年代、写真製版を使った 立体版画で国内外で多くの賞を受賞。行為を作品化する。 パフォーマーとしても特異な存在。田中角栄と周恩来の顔を一万個のさざれ石に刷り、展覧会終了後川に返す 「石の版画」は代表作の一つ。サンパウロビエンナーレ、シドニービエンナーレなどの国際展の日本代表。
1980〜81年 文化庁芸術家在外研修員として欧米に留学。 70年代はBゼミスクールで造形的表現行為のゼミを持ち、80年代は東京芸術大学で版画の、2000年代は 武蔵野美術大学にて油絵の非常勤講師を勤める。 現在は油彩、水彩を中心に発表。 美術館での講習、講演の経験も多く持つ。作品は国内外の多くの美術館に収蔵される。 94年より浅間山連峰の裾野、長野県東部町(現在の東御市)にアトリエを構え移住し、現在に至る。
来年1月、埼玉県立近代美術館にて「アーティスト・プロジェクト: 島州一 世界の変換と再構築」が開催 される。