島州一のライフワークとも呼べる「Tracing -Shirt」シリーズは、日々見上げている浅間山の化身として普段身につけているシャツを克明にトレースすることからはじまりました。
浅間山のアイコンとしてのシャツ、作家のアイコンとしてのシャツ。浅間山という広大で深遠な自然空間と個人として生活している日々の時間や身体、これら相対するものを一つの画面に封じ込めるという手法を作家は発見したのです。
季節や時間による山の景色の移ろいを、ワードローブの中からその日の気分で選んだシャツに重ね合わせ投影することによって200点を超える多彩なシリーズ作品が生まれました。
「山はいつもシャツを着替える。浅間山の象徴である私のシャツは、一瞬たりとも同じでない山の天気と同様、描くたびに異なった様相をして現れてきます。私の皮膚と浅間山の外観がピタリと重なり、私の存在そのもののアイコンとして成長し続けています。」
島州一
1935年 東京都麹町生まれ
1957年 多摩美術大学絵画科卒業
1970年〜 日本を代表する前衛的な版画作家としてサンパウロビエンナーレ、シドニービエンナーレなどの国際展に数多く出品
1980〜81年 文化庁芸術家在外研修生として欧米に留学
1994年〜 浅間山連峰の裾野、長野県東部町(現在の東御市)にアトリエを構え移住
2007年 Tracing-Shirtシリーズ始まる
2011年 「原寸の美学」市立小諸高原美術館個展
2016年 「世界の変換と再構築」埼玉県立近代美術館個展
2018年 急性骨髄性白血病の為死去、享年82歳
2019年 追悼 島州一版画展(須坂版画美術館、長野県須坂市)