本日から金田実生 による「その頃、わたしは」と題した展覧会を開催します。
今週16日の日曜日まで開催されている森岡書店での同作家個展「夜の種類 眠りにつくあいだ」に合わせてRED AND BLUE GALLERYでは金田の新旧の作品を展示します。
御来廊、お待ち申し上げます。
変容と集積に触れる
どうやってこの線は生まれたのだろうか。
直感的な気もするし、どこか遠くからやってきたように思うこともある。ただひとつ、それは金田さんの手から、身体から紡がれた軌跡であることだけは確かなこととして存在する。
作品と対峙した時、私だけが見ているものだと感じることがある。個人の経験に基づく極私的なフィルターがあって、画面に描かれた色や形、そして線から受け取るものはそのフィルターを通して見た私のものであり、他の誰かが見ているものとは異なるのではないかという感覚である。今回の展示について思案している時に、変わっていくことと変わらないと思っていることについて考えていた。個人の内側で変化する認識の多くは他者には見えにくいもので、あまり口外されないものなのだと思う。よくあることだが、他者とコミュニケーションをとるうちに自身の考えていることや思っていることの輪郭がはっきりしていくことがままある。出来事や事物を介して訪れた思考や感覚が言語になるのはこういう時なのではないのかと。
制作年が10年以上離れている作品を一緒に展示するのは初めてとのこと。1997年に描かれた「Untitled」を、金田さんの身体に蓄積された時間や思考の変遷を手繰り寄せるためのもう一つのフィルターとして展示したいと考えた。鑑賞者と金田さんそれぞれが持つ個の集積が重なった時、線が生まれた場所に少しだけ触れられるような気がしている。
金森千紘(infans.)