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このたび、RED AND BLUE GALLERYでは若手女性作家2名による展覧会を開催いたします。

二人の作家はまるで違った手法によって制作活動を行っています。しかし、二人の作品をじっくり見ていくと、そこには共通する何かが据えられているように思われます。話を聞くと制作の原点として共に、これまでに作家自身が見てきた風景の「記憶」があるように思われます。

石川薫は国内でデザインを学んだ後、ロンドンでファインアートを学び、今年10月に帰国。今回は帰国後初の展覧会となります。石川はこれまで、日常の風景の中で目にするリンゴなどの果実や日用品を直接作品の素材として用いてきました。そこにわずかな手作業を加えることで、真新しい作業の痕跡と、そのベースとなる既存の物質のもつ質を対比的に見せることを制作の手法としています。わずかに手作業を加えることによって、日用品であったものの記憶や形態が改めて浮き出てくるように感じられます。

一方の澤本幸子は自身の目で見た風景の記憶を一度眠らせ、その後制作に向かいます。支持体に絵の具で彩色していくその行為はオーソドックスな絵画の制作スタイルをとっています。しかし海(水面)という有機的なモチーフから導きだされながらも極めて明確な色彩と形態のその絵画は、見るものを安心させる同時に、どこか不思議な印象を残します。

石川は日常の風景、澤本は海の風景が、それぞれ原点です。風景の中から印象的な視覚的要素を一度身体にとけ込ませ、「記憶」となったそれらを改めて再構築させます。どちらも記憶に残る風景から生み出される作品でありながら、その過程で対象がはっきりするのか、視覚的には驚くほど明快な「形態」が打ち出されています。まるでシンプルな形態こそが目に見えない時間や記憶をはらんでいるかのように。

全く違った手法をとりながら、多分に共通点を感じさせる二人の作品。同じ空間で見るとき、目に写る風景から、私たちは何を体感し、それはどんな記憶となって残るのだろう。

キュレーション 山田元子

A red apple and so on

A red apple and so on  石川薫

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