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7月18日から29日まで小作志野「十二支の記念碑」を開催致します。

「手」を素材としたモノクロームの平面作品による空間演出を試みた昨年の個展に引続き、今回は作家のもう一つのライフワークとも呼べる年賀状制作から始まった干支をテーマとした12作品(年1作12年間を経て遂に完成)すべてを展示する初の展覧会です。

このシリーズにおいても作家が考えている最終の完成形は縦4mの巨大なモニュメントとも言える平面作品を同一空間に12点展示するという壮大なインスタレーションであり、その全体像は想像する事しか出来ません。

本展では縦1mサイズの十二支12点を一同に展示します。壮大な空間演出のスタディーモデルとは言え、限定されたテーマに対して自ら課した制約の中、極度に抑制されたモノクローム表現でこそ生まれる静謐な緊張感が溢れる平面作品群です。

12年間以上を費やし、毎年その年の干支を丹念に形作った作家の執念ともいえる本シリーズを堪能頂けるまたとない機会となるでしょう。

是非この機会にご高覧下さいますようお願い申し上げます。

ozaku-dragon                                                           The monument in Dragon year   2012 Digital Print 

 
 作家コメント
  作品の背景
 色彩よりもモノクロームの世界で、より自由度と深みのある取り組みができると感じてきた私は、黒い    色面を空間と見立てた作品を発表してゆく中で、< 歴史上の人物 >シリーズ(1993-1998年)のあと次のテーマとして< 手 >を選んでいました。子供の頃からそれまでに制作してきた作品を思い起こすと、数年ごとに何かしら< 手 >が表現の主役や脇役で登場していたからです。
これは、きちんと< 手 >と向き合うことで、無意識の層でかすかに捉えているものを具現化できるのかもしれない。すくなくともこれだけ繰り返しているのだから飽きないはず。そう思ったのです。
 
 また当時は、銀塩フィルムでとらえたイメージをバラ板印画紙に定着させることでフィニッシュとしてきた制作方法から、コンピュータ出力によるプリントへと移行する必要性を感じ始めた時期でもあり、この探求は、2001年からのデジタル出力への移行実験を経て、2005年の個展で初めて< 手 >シリーズとしてまとまった形で姿をあらわします。
 
 一方でこのような個展発表のシリーズ作品とは別に、長年続けてきた年賀状作品の系列があります。それは9歳の頃、母方の叔母で 絵本作家の故まついのりこ氏がその当時自宅で開いていた子供の絵画教室の”木版画で年賀状を作ろう”の回に参加したことからはじまります。その後、その時にできる技法で1年1作を目標にコツコツと年賀状作品を作り続ける中で、今回参考展示させていただく< 円卓の十二支 >(1993年-2004年/リノカット)が完成しました。 そしてこのシリーズが終わった時、次の年からの年賀状シリーズをどうするのか? という問題に突き当たります。
 
 その頃< 手 >の作品は、平面作品としての自由度やリアリティに加え、デジタル出力に変更したために得られた感触、つまり伝統的な絵画が持つ最初に決定した画面サイズから大きく変更することが不可能な点や、写真プリントの持つ絵画ほどには形や距離感を変えられない点、また層状の時間を持ち得ない構造などからの解放。そしてこれらに加え、人間が感覚できる領域よりもはるかに大きな世界をかい間感じさせるシステムとしての作品になりつつあるとの実感が融合し、モチベーションが持続できるシリーズとなってきていました。
 
 その流れの中から、< 手 >の派生作品として次の年賀状シリーズを制作することで、これまでとはすこし異なった可能性の枝葉をのばすことを思いつきます。
 
 ご存知のように、コンピュータは約2ヶ月で技術が更新され続ける変化の速い分野です。果たしてコンピュータ内でデータを組み上げ、デジタル出力するこのシリーズを12年間続けることが技術的、あるいは設備的経済的に自分に可能か? 2-3日あれこれ考えましたが、結局冒頭に書きましたイメージが鮮明だったために次の12年の一歩を踏み出し、年賀状としては遅れつつもようやく完成に至りました。
 
 このように振り返ってみると、私の作品制作において、< 十二支の記念碑 >はそれまで別々の系統であった「手」のシリーズと年賀状シリーズの交点に位置しているようです。
     
    作品の構想
 < 十二支の記念碑 >は、< 手 >の派生作品として、その干支生まれの人々による記念碑をイメージしたシリーズ作品です。理想的には縦4mほどのサイズで出力し、ランダムに天井から吊るしてスポットで照らし、その暗い空間の中央に< 円卓の十二支 >を載せた円卓を配置する。そのような複合インスタレーション作品の重要な部分として構想されました。
 
  今回は縦1mのバージョンで出力し、すべての干支がそろって展示される初の機会となります。RED AND BLUE GALLERYの研ぎ澄まされた空間と、どのような相乗効果を生み出せるのか? 作者の私も楽しみにしています。 
 
 余談ですが、< 十二支の記念碑 >のイメージは、こどもには難なく干支の動物として捉えられるのですが、大人となると不思議な事にどう見ても手の集合体にしか見えないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
 ご覧いただければ幸いです。
 
 作家略歴

1964 東京に生まれる
1983 東京都都立芸術高校美術科絵画科(油画)卒
1990 東京芸術大学美術学部絵画科油画科専攻卒業
1992 同大学大学院美術研究科版画科修了
1992~93 同大学美術学部工芸科金工専攻鍛金科研究生
1997~2006 同大学芸術情報センター非常勤講師 (コンピュータリテラシー・CG)

主な展覧会

1995「個展」写真 ⁄ 人物 ギャラリー イン ザ ブルー(宇都宮)
1996「個展」写真 ⁄ 人物2 工房 “親”(東京 恵比寿)
1997「個展」写真 ⁄ 人物3 工房 “親”(東京 恵比寿)
1998「個展」写真 ⁄ 人物4 ギャラリー工房 “親”(東京 恵比寿)   VOCA展’98(上野の森美術館)
1999「個展」<幾つかの試み>ギャラリー イン ザ ブルー(宇都宮)
2002「環境芸術学会 作品発表展覧会」淡路景観園芸学校(淡路島)
2005「個展」<手>ギャラリー イン ザ ブルー(宇都宮)環境芸術学会 作品発表展覧会」札幌メディアパーク ⁄ スピカ(札幌)
2007「個展」<手2>巷房(東京 銀座)
2008  環境芸術学会 第9回大会「研究発表」「エキジビション」東京藝術大学大学院映像研究科  新港校舎(横浜)
2009「個展」<手3>巷房・2(東京 銀座)「個展」<手2007-2009>ギャラリー・イン・ザ・ブルー (宇都宮)「個展」<手2007-2009>現代HEIGHTS Gallery Den (東京 北沢)
2011「個展」<手4>ギャラリー巷房・2(東京 銀座)
2012「開廊20周年記念展」ギャラリー・イン・ザ・ブルー (宇都宮)
2014「個展」<手5>ギャラリー巷房・2(東京 銀座)
2016「絵画/空間演出/モノクローム 小作志野展」RED AND BLUE GALLERY(東京 新富町)
2017「年賀状展」<円卓の十二支> ギャラリー巷房・2(東京 銀座)
2017「小作志野 年賀状展」ギャラリー・イン・ザ・ブルー (宇都宮)
 

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                             The monument in Ox year   2009 Digital Print

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