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 この度、RED AND BLUE GALLERYでは味岡伸太郎展「富士山麓20景之内五」を11月10日(金)から開催します。今回の展覧会は味岡が富士山麓1合目付近20カ所から採取した土をつかった大判のドローイング20点の内15点を豊橋のギャラリーサンセリテ(会期11/3-26)、内5点を弊ギャラリーの2会場で展示します。

  長年にわたり味岡は採取した土に木工用ボンドを混ぜ綿布に定着させて「絵画」として発表してきました。昨年の「あいちトリエンナーレ2016」では「峠へ」と題し、愛知県と接する静岡、長野、岐阜、三重との県境70カ所の断層部分から採取した土による作品を発表し、壮大で豊かな土の世界を示しました。今回の採取地である富士山麓は、27年前に味岡にとって土に関わる事になったゆかりの地であり、また味岡が住む豊橋と東京の中間点としての象徴的な場所です。

  東京では久々となる味岡伸太郎展をぜひこの機会にご高覧くださいますようよろしくお願い申し上げます。

富士山麓20景

印野

  富士山麓20景之内 印野 (綿布・土 178×152cm 2017)

印野採取地

 

2017年の熱い夏が始まった。土との関係が始まったのも、1990年の熱い夏だった。

「富士山麓・上九一色村(現、南都留郡富士河口湖町)豊茂。その牧草地の草を剥ぎ、20m×6mの土を露出する。その中に60cm×17m深さ1mの溝を掘る。掘り出した土をふるいにかけ、石をサイズごとに選別して山にする。自然の大きさと強さと量に、うっかりするとくじけてしまう単調で体にこたえる時間が果てしなく続いた後に、土や石のサイズが違う5つの山が残った。我々が毎日足にする大地の見えない姿を教え、自我を捨て自然の在り方に身をまかせ、ひたすら行為することで自づと導かれる姿を確認する作業である。行為の終了した翌日の未明、富士の裾野から昇る日の出を受け、刻々変わる富士の色をバックにたたずむ、富士の火山灰や溶岩で出来上がった5つの山。これも、まぎれもなく富士の一つの姿であった。(富士山麓地質調査/1990年8月25日)」

 あれから、すでに27年。土との関係も深まり、再び、富士山麓に土を求めた。今回のプランは富士を右に見て一周、露出した地層から、一地区、天地左右、約45cmピッチで3行3列、計9種の土を採取し、約160x180cmの綿布にドローイングする。

 東京と愛知県豊橋市で同時に発表する。その中間点の象徴的な場所として、富士を選ぶことに時間は必要なかった。おおよそ山麓の一合目を目安に一周し、工事や自然の崩落、浸蝕で露出した地層を探して採取する。

 27年前の豊茂にも再び訪れた。辺り一面牧草地で土は露出していない。富士の一合目は牧草地も山林も皆富士に向かってなだらかな傾斜地である。土の採取出来るところはほとんどない。それは、自然がのこり、破壊が進んでいないということでもあり、古くに開け安定した土地ということでもある。

 なんとか、豊茂でも採取した。その他、20地点で採取することができた。富士山の周辺は、当然とはいえ、富士の噴出物が堆積したものである。その多くは濃い茶色から黒である、色の変化は少ない。そのことは、27年前の「富士山麓地質調査」の経験で分かっていた。その通りの土が採取された。

 地層を選ぶことはない。採取可能な地層があれば、迷わず採取する。色彩は描くことによって生まれ、実体を持つものである。実体を持つ色が大地に広がっているのではない。土そのものの色調が豊かならば、目はそちらを見がちである。しかし、その変化が些少であれば、かえって目は描く行為に向かうだろう。

 20地点で20作品。内、東京に近い地点で採取した土による5点が東京、残り15点を愛知県豊橋市で展示する。土を求めて彷徨った五日間、右手に見えるはずの富士は一度も姿をみせなかった。これから始まるドローイングの日々は、私もこの夏、初めて見る豊かな富士となるだろう。

(富士山麓20景/2017年8月6日)

 

味岡伸太郎プロフィール

1949 / 愛知県豊橋市生まれ 「美術に係わることでデザインが大衆に迎合しない。デザインに係わることで美術が社会との接点を見失わずにすむ。 美術とデザインが造る山の稜線上を歩け。どちらへ足をとられても谷に落ちる」画家・山口長男からなげかけられた言葉 が活動の基準になっている。 現在は精神的にも、物質的にも自然を主題にした美術と、タイプフェイス・タイポグラ フィを主にしたグラフィックデザイン。建築のデザイン等を並行して続けている。

【主な個展】

1972 / 1977 / 紅の木画廊、豊橋

1979 / 1981 / ギャラリーL、豊橋

1980 / かねこ・あーとギャラリー、東京

1982 / 座北島、豊橋

1983 / 鎌倉画廊、東京

1986 / 1987 / 1994 / 2000 / 双ギャラリー、東京・吉祥寺

1989 / 西武百貨店、豊橋

1990 / 1992 / 1993 / 1994 / 1995 / 1996 / 1997 / 1998 / 1999 / 2000 / 2001/ 2002/ 2003 / 2004 / 2005 / 2006 / 2007 / 2008 / 2009 / 2010 / 2012 / 2013 / 2014 / 2015 / ギャラリーサンセリテ、豊橋

1992 / 1996 / Galerie Tiller、ウィーン

1993 / 1994 / 1995 / NICAF YOKOHAMA / パシフィコ横浜、横浜

1997 / NICAF / 東京ビックサイト東京国際展示場、東京

1999 / NICAF / 東京国際フォーラム、東京

1994 / アートフェラーナ、浜松

1995 / INDEX GALLERY、大阪

1995 / 2001 / GALLERY APA、名古屋

1999 / 2002 / GALLERY HIRAWATA、藤沢

2000 / 夢創館、神戸 2000 / TAKADA Gallery、San Francisco

2001 / 2003 / ギャラリーなうふ、岐阜

2004 / アートフォルム佐鳴湖VIEW、浜松2014 /

ギャラリー入船、豊橋

【その他のグループ展、アートフェアなど】

1975 / 1976 / 1977 / 墨人展(書) / 京都市美術館

1978 / 等迦会展 /瑛九賞 / 東京都美術館

1979 / 現代日本美術展 / 東京都美術館・京都市美術館

1982 / 舞「神座」 演出・舞台衣装 座北島、豊橋 / 中田島砂丘 / 西武 City8、浜松

1982 / 日独芸術交流展 PERFORMANCE「目と耳と口」 / 西武 City8、浜松

1988 / 色・形・音をめぐっての三週間 / 双ギャラリー、東京

1990 / WAVE OF ENERGY / 富士山麓、山梨県上九一色村

1991 / 「無冠の表現回路 エコロジーアートへ」展 / 名古屋電気文化会館 COLOR SAMPLE 採集地:豊橋/高塚海岸~嵩山町

1991 / 1992 / 「自然との対話・自己との対話」 / 稲沢市荻須記念美術館

1992 / 二つのモニュメントのプロジェクトと新作展 / ギャラリーサンセリテ、豊橋

1992 / モニュメント / 愛知県立豊橋西高等学校

1993 / インスタレーション / 豊橋市立吉田方中学校、豊橋

1993 / インスタレーション / 茨城県岩間町岩間分校跡、茨城県岩間町

1994 / コラボレーション(多田正美) / ギャラリーサンセリテ、豊橋

1995 / 日本現代美術作家7人展 ブルガリア国立聖キルリ&メトディ美術館、ブルガリア・ソフィア

1995 / SOH 10周年展・連鎖・SIX ARTISTS“連環” / 双ギャラリー、東京

1996 / 現代日本のアート7つの点 ハンガリー国立民族博物館、ブダペスト日墺現代美術作家交流展 ニーダーエースストライヒ モダンアートドキュメント センター オーストリア・ザンクト ペルテン

1997 / 表出する大地展 / 広島市現代美術館、広島

1998 / 国島征二・味岡伸太郎展 / 美浜の家、愛知・美浜

1998 / 「日本画」純粋と越境・90年代の視点から / 練馬区立美術館、東京

2000 / 市制50周年記念 アートでたんけん!絵画の世界へ 刈谷市美術館、愛知・刈谷市

2003 / NATURE WONDERLAND 2003 / 愛知こどもの国、 愛知・幡豆町

2004 / アートフォルム佐鳴湖VIEW エントランス、浜松

2005 / 双ギャラリー20周年連続展 / 双ギャラリー、東京

2009 / Shanghai New Ink Painting Art Exhibition / 多倫現代美術館、上海

2010 / 双ギャラリー25周年記念展 / 双ギャラリー、東京

2012 / あいちトリエンナーレ地域展開事業「現代美術展inとよはし」豊橋市美術博物館、豊橋 土祭 / 栃木県益子町石蔵 現代美術展ART田ノ嶋39 / 愛知・新城田ノ嶋、ギャラリーサンセリテ・豊橋、双ギャラリー・東京、アートフォルム田町サロン・浜松

2014 / インスタレーション〈「穹」愛知ノートバージョン〉 / 愛知・新城田ノ嶋

2015 / 愛知ノート -土・陶・風土・記憶- / 愛知県陶磁美術館、愛知県瀬戸市

2016 / あいちトリエンナーレ2016 / 愛知県美術館

2017 / ワークショップ「陶磁の魅力丸ごと体験事業「土の色発見・楽焼作りと茶会体験 土・色・茶の湯」

収蔵 豊橋市美術博物館

 

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